「書く力」池上彰, 竹内政明(著)を読んで|文章のプロが語る文章術

書く力 私たちはこうして文章を磨いた」という本を読みました。
ジャーナリストの池上彰さんと読売新聞のコラム編集手帳の竹内政明さんの対談本です。

僕は竹内さんの大ファンですので、この本の中で紹介されている竹内さんの文章術を中心にご紹介したいと思います。

竹内政明さんの文章術

まず、竹内さんは既に編集手帳の文章術という本を出されています。

なので今回はこの「書く力」で語っている竹内さんの文章術についてご紹介します。

要素を書き出す

やみくもに文章を書き始めても、全体として良い文章には出来ません。
竹内さんはまず、書き出しと結びを考えるそうです。

そしてその間を繋いでいく。
池上さんもまず要素を書き出して、全体として繋げる手法を取っているそうです。

定形にしない

拝啓で始まり敬具で終わるような、いわゆる定型文は避けているそうです。
使いやすい定番の文というのは、プロの書き手からすると手抜きに感じると述べています。

部品を多く持つ

書きたいテーマに関係する言葉や名文をストックしておく事が大事だそうです。
その為に本を読んだり、映画で気になったセリフをメモするようにするのがお勧めです。

名文を写す

竹内さんは今でも、二日に一度のペースで「井上靖全詩集」に収録されている「北国」という詩集の一部分をノートに書き写されているそうです。本の中では「海辺」と「北国」の2つが紹介されています。
書き写すとなると一字一句追う必要があるので、文章鍛錬にもなるそうです。

悪魔の弁護をしてみる

自分の考えを深くする為に、情状酌量の余地の無い犯罪者を想定して弁護をしてみるそうです。
背景にどんな事情があったかなど、自分で想像してみる事で視野を広げる訓練になるとのことです。

本のお勧めポイント

この本は文章術の他にも、様々な面白いエピソードが載っています。

息子さん

竹内さんの息子さんが塾で朝日新聞の天声人語を教材にしていたそうです。
それは書き出しの1行を読んで、後半を自分で書いてみようというもので、それを知った竹内さんが「俺が見てやる」と言ったものの断られたとのこと。
ファンからすると信じられない話ですが、父親と息子とはそういうものですよね。

読売新聞の入社案内

本の中で、竹内さんが書いた読売新聞の入社案内用の文章が紹介されています。
2週間程かけて書いた力作だそうで、さすがの名文です。

長野支局に赴任した。1年目の思い出が三つある。

善光寺が焼けた。日は暮れて、締め切りまで時間がない。現場、警察、消防と、手分けして取材に散った。僕は写真を一手に任された。撮り終えて職場に戻り、現像して呆然となった。炎上の写真がすべて真っ黒で、1枚も写っていない。「おい、あと5分で締め切りだぞ」。誰かがドアを叩いた。出たくない。このまま暗室のなかで一生暮らしたい。そう願ったのを覚えている。“燃える善光寺”の写真が載らなかったのは読売だけである。三振1。
(略)
会社を辞めもせず、辞めさせられもせず、30年後の今、こうして『入社案内』の筆を執っている。人は思うだろう。満身創痍になってでも続けたいほど、新聞づくりは面白い仕事なのか、と。あるいは、読売新聞って懐の深い会社なのね、と。どちらの感想も、そう的を外れていない。僕よりもデキる君よ。いつか、僕には縁のなかった手柄話を聴かせてくれ。4三振も5三振もして、僕の記録を塗り替える君よ。いつか、ゆっくり酒でも飲もう。
(読売新聞「入社案内」筆・竹内政明「大きな声では言えない」より)

読売新聞の社内報

また、読売新聞の新社屋が完成した際に社内報に掲載された文章も紹介されています。

 ノーベル物理学者の小柴昌俊さんは自分を「実験屋」と呼ぶ。歌手の都はるみさんは「歌屋」を自称する。映画監督は「活動屋」を、エンジニアは「技術屋」を名乗る。プロの世界には、卑下を装った矜持の自称がある。
 おのが仕事に抱く誇りのマストが高いぶん、蔑称めいた呼び名を”底荷”に積み、自分という船のバランスを保つのだろう。「ブン屋」もその一つである。
 誇らしい。新社屋の感想はその一語に尽きる。機能といい、美観といい、新聞社で日本一、おそらくは世界一かもしれぬ職場環境に胸を張った人は多いはずである。
 世の不正に怒ること。人の悲しみに寄り添うこと。誰よりも怒りん坊であり、泣き虫であること。胸を張りすぎて原点を忘れ、船が傾いてもいけない。「おい、ブン屋さんよ」と日に何度か、わが身に呼びかけている。
 遠い昔、ある歌謡曲の替え歌で『ブン屋ぶるうす』なるものを聴いたことがある。
鬼も蛇も棲む憂き世の底で/散った命にもらい泣き/インクの匂いに顔うずめ/酔いつぶれた夜を誰が知ろ・・・。
誇りのマストよ、より高くあれ。自我の底荷よ、より重くあれ。
(『読売新聞社報』新社屋特集号より 筆・竹内政明)

まとめ

文章のプロ同士が語り合ったこの一冊。
文章を仕事にしていてもしていなくても、書くのが好きな人には是非読んで欲しい一冊です。

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