20代が観るべきTEDトーク|日本語訳全文|メグ・ジェイ

起業家や政治家、アーティストに学者など、様々な分野のトップランナーがその知見をプレゼンするカンファレンス、「TED(テッド)」。
正式には「TED Conference」(テド・カンファレンス)といい、日本各地や大学などでも開催されています。

今回ご紹介するTEDトークは、心理学者/カウンセラーのメグ・ジェイさんによるプレゼンです。
この動画はTEDの公式サイトでも観ることが出来ます。

NHKの番組「スーパープレゼンテーション」でも紹介されていました。
20代に絶対に見て欲しいこのプレゼンを日本語に訳して全文ご紹介します。

メグ・ジェイ:心理学者/カウンセラー
バージニア大学で心理学を学んだ後は、非営利の冒険教育団体Outward Boundのインストラクターを5年間務める。
そこでの経験から臨床心理士になることを決意し、カリフォルニア大学バークリー校で臨床心理学とジェンダー学の博士号を取得。
現在はバージニア大学で臨床心理学を教える傍ら、私設のクリニックで患者を診ている。
20代の患者や学生を指導した経験をもとに、2012年、著書「The Defining Decade」を出版。

メグ・ジェイのTEDトーク日本語訳全文

【Why 30 is not the new 20】
(“30代は20代みたいなもの”じゃありません)

20代のときに、私は心理カウンセリングで初めて患者を診ました。
当時私はUCバークレーで臨床心理学を学ぶ、博士課程の学生でした。
その患者はアレックスという26歳の女性でした。

初診のときアレックスはジーンズとダボッとしたシャツを着て、診察室のソファーにストンと腰掛けるとペタンとした靴を脱ぎ、男の子の問題について相談に来たと言いました。
それを聞いて私はほんとホッとしました。
私のクラスメイトなんて初めて診たのが放火犯だったんですから(笑)

それに比べ、私のは20代女性の男の子に関する悩み相談。
これなら問題なくこなせると思ったのですが、どうも甘く考えていたようです。
毎回アレックスが持ち込む愉快な話を聞き、私は彼女に同感し問題は先送りにしていました。

「30歳は昔の20歳よね」とアレックスが言えば、私もそんなものだと思っていました。
就職も結婚も出産も昔より遅くなって、死ぬことだって先になってる。
そんな20代の私やアレックスに時間ならいくらでもありました。

しかし、しばらくすると私の指導教授が恋愛に関して、アレックスにとやかく指図するようにプッシュしてきました。
私はこう言って押し返しました。
「彼女が釣り合わない人と付き合ってバカな男と寝ているのは確かですが、その人と結婚するというわけでもないでしょう」
すると指導教授はこう言いました。
「今は大丈夫でも、次の彼とは結婚するかもしれない。とにかくアレックスが結婚を考えるのは、結婚するような相手に会う前が最適なんです」
心理学者が「アハ体験」と呼ぶ瞬間です。
この瞬間、30歳が昔の20歳では無いことを悟りました。

確かに身を固めるのは昔よりも遅くなりましたが、だからと言ってアレックスの20代が自己実現の努力をやめて良い時期になったわけではなく、むしろ遅くなったことで自己実現に格好の時期となったのに、私たちはその時期を無為に浪費していたのです。

そのとき私が悟ったのは、アレックスと彼女の恋愛に限らず、20代の若者全般がキャリアや家族未来などについてもこんな風に静観して過ごすのが真の問題で重大な影響を及ぼしているということです。

現在、アメリカには20代が5000万人います。
アメリカ人口の15%を対象とした話をしているわけですが、20代を経験もせずに大人になる人などいないことを鑑みれば、100%の人が該当することになります。

現在20代の方は手を挙げて?何人かいると良いのですが。
あっいますね!素晴らしいです。

20代の人と仕事で関わったり、20代の人と付き合っている方、20代の人を心配して夜も眠れない方は?どうぞ手を挙げて。
ありがとう、素晴らしいです。
20代が本当に重要ということです。

そこで私は、20代を専門としています。
5000万人にも上る20代の皆に、心理学者・社会学者・神経学者・生殖受胎の専門家には既に常識となっていることを知ってもらいたいからです。
既に常識となっていることを知ってもらいたいからです。

色々な方法がありますが、20代を有効に活かすのは最も単純ながら、最も影響力を持っていることの1つです。
仕事・恋愛・幸福に関して、そして場合によっては世界への貢献の可能性さえも決めるのです。
これは私個人の意見ではなく事実なのです。

人生を決めてしまうような出来事の80%が35歳までに起こることが知られています。
つまり、人生を決定付ける—重要な決断・経験・アハ体験の10個中8個は、30代半ばまでに起こるのです。

40歳以上の方でも取り乱さないで!会場の皆さんは大丈夫だと思います。
キャリアの最初の10年間が、その後稼ぐであろう金額に指数関数的に影響します。

アメリカ人の半数以上が30歳までに結婚するか、将来のパートナーと付き合うか同棲しています。
脳は20代のうちに成人期に向けて配線し直されると同時に、人生最後の二回目の成長をしぐんと伸びて仕上がります。
つまり、自分を変えたいと思うなら20代こそがその時なのです。

性格についても、20代ほど変化を見せる時期はありません。
女性の妊娠しやすさも28歳でピークを迎え、35歳以降は色々と難しいことが出てきます。
体についても人生の選択肢についても、よく理解すべき時期は20代なのです。
子供の発達においては、言語能力や愛着や脳が育つ為に、最初の5年間が臨界期だということは広く知られています。

その期間は、何の変哲も無い日常生活が人格形成にことのほか大きな影響を与える期間です。
しかし、成人期の発達なんてあまり話題となりません。
20代は成人発達の重要な期間であるにも関わらず、です。

しかし、20代の人はそんなこと耳にしないわけです
ニュースになるのは人生設計の時期が変化してきたとか、研究者でさえ20代はまだモラトリアム期間だとか、ジャーナリストも20代に「パラサイトシングル(すねかじり)」や「キダルト(子供大人)」といったふざけたあだ名を付けています。
本当です。

文化として、私たちは成人期を形成する上で最も重要な十年間を軽視してきました。
レオナルド・バーンスタインはこう言いました。
偉業を成し遂げるには計画と焦りが必要だと。
まさしく真実ではありませんか?

20代の頭をなでながら「人生を始めるにはあと10年ある」と言ったら何が起こるでしょう?全く何も起こりません。
その人から切迫感と大志を奪うだけで、絶対に何も起こりません。

そして、毎日皆さんのお子さんや皆さん自身のような、賢く興味深い20代の人たちが私の診察室に来て、こんなことを言うんです。
「彼は私にはふさわしくないって分かってるけど真剣な交際までの時間つぶしだからいいでしょ」
または「30歳になるまでに働き始めれば大丈夫だよと皆が言うんです」と。

しかしそのうち、こんな風に言い始めます。
「もう20代も終わりかけなのに、何も自慢できることがないんです。大学を卒業した直後の方が履歴書の見栄えが良かった」
さらに進むと、そのうちこんな風に言い始めます。
「20代の私のデートはイス取りゲームの様でした。色々な人と楽しく付き合っていたんですが、30歳頃になるとまるで音楽が止まった時のようにみんなイスに着席し始めたんです。私だけ座り損ねるなんてイヤでした。だから時々こう思うんです。夫と結婚したのは、30歳のときに一番近くにあったイスが夫だったからだと」
さっきの20代の方はどこですか?
そんな風にはしちゃダメよ。
少し軽々しい言い方ですが、間違ってはダメです。

利害はとても大きいんですから、多くの物事を30代まで後回しにすると30代でのプレッシャーは巨大なものになります。
キャリア構築を始め、住む街を決め、パートナーを探して、後回しにした分さらに短い期間に2〜3人の子供を出産することになります。

これらの多くは、同時にはできません。
ごく最近研究で明らかになってきたように、全てを30代の間にまとめて行うのは、単純に困難かつ多くのストレスが伴うことなんです。
2000年以降の中年に起こる危機は真っ赤なスポーツカーを買う形では現れず、望むキャリアを歩めないということや子供が欲しくなったのに産めなかったり、子供に兄弟を作ってあげられないことに気付くことで訪れます。

あまりに多くの30代40代の人たちが、診察室の反対側に座りながら自分と私を見比べて、自身の20代に関して決まってこう言います。
「私は今まで一体何をしてたの?一体何を考えてたの?」と言います。

私は、20代の人たちの思考や行動を変えたいんです。
その変化を示すのに打ってつけの話があります。
エマという女性の話です。

エマは25歳の時診察室にやって来ました。
彼女の言葉を借りれば、自己喪失に陥っていたからです。
芸術・娯楽の分野で働くのがいいのかなと思いつつもまだ決心がつかず、その代わり数年間ウェイトレスとして働いて来たと語ってくれました。
当時、エマは安く済むからという理由で将来の夢があるわけでもない気性の荒い彼氏と同棲していました。
彼女の20代も困難なものでしたが、それ以前の人生はもっと困難に溢れていました。

診察中何度も涙を流しましたが「家族は選べないけど友達は選べる」とそのたびに言って気持ちを落ち着かせていました。
ある日エマがやって来て、ひざを抱えうなだれて診察時間の大半をむせび泣いていました。
彼女はちょうど新しい連絡帳を買って、その朝は多数ある連絡先を書き込みながら過ごしていましたが「緊急の場合こちらに連絡してください」という言葉に続く空欄をじっとただ見続けるだけで埋められなかったんです。

彼女はヒステリー気味に私を見てこう言いました。
「ひどい自動車事故に遭ったら誰が来てくれるの?ガンにかかったら誰が面倒を見てくれるって言うの?」
その瞬間「私がするわ」と言いたいのを必死にこらえました。

エマが必要としていたのは、親身に面倒をみてくれるセラピストではありません。
必要なのは素敵な人生で、これが人生を考える転機になると思いました。
アレックスの初診以来多くを学んでいたから、エマが大切な十年間をムダにするのを何もせず眺めているわけにはいきませんでした。

その後数週間数ヶ月にわたって、私はエマに男女問わず全ての20代が知らされるべき3つのことを伝えました。
まずはアイデンティティ・クライシスに陥っていることを忘れて、何かアイデンティティ・キャピタルを築くよう伝えました。
「アイデンティティ・キャピタルを築く」とは、自身の価値を高めるようなことをするという意味です。

自分の将来の―理想像に近付くために、自分への投資になる何かをすることです。
エマの将来のキャリアは私には分からなかったし、未来の仕事は誰にも分かりませんが、これだけは確かです。

アイデンティティ・キャピタルは、アイデンティティ・キャピタルをどんどん呼び込みます。
つまり、今こそがやってみたいと思っていた国際的な仕事やインターンシップや起業などをすべき時なのです。
20代に色々と模索することを軽視しているわけではありませんよ。
ただ人生に意味をもたらさないような模索を軽視しているんです。

ただ、それだと模索とさえも呼べないものです。
それは先送りしているだけに過ぎません。
私はエマに職を模索しました。
目的に合うものを選ぶようにと伝えました。

2つ目としてエマに伝えたのは、都会派仲間の生き方は過大評価されているということ。
親友は親切にも空港まで送ってくれたりしますが、20代の人が同じ考えの人だけとつるんでいると、友人が知っていることや知っている人、友人の考え方や話し方や、友人が勤務する場所などが限られた範囲だけになってしまいます。

新しく自分の資本になるものや新しい交際相手は、必ずと言っていい程内輪のサークルの外にいます。
新たな物事は、友人の友人の友人のようないわゆるゆるい繋がりからやって来ます。

そう、20代の半数は無職か不完全雇用の状態ですが、半数はそうではありません。
ゆるい繋がりこそが後者の集団に入る方法です。
仕事の半分は公募されないため、近所の人の上司に接触することが公募されない職に就く手段になります。
ズルではありません。

情報はこのように広がるものだからです。
最後に忘れてはならないのが、エマが信じていた「家族は選べないが友達は選べる」という事に関して。
エマが育った環境ではその通りでしたが、20代なのでもうじきエマは家族を選ぶでしょう。

パートナーと結婚し、自分自身の家族を築き上げるのです。
エマには今こそが家族を選び始めるときだと伝えました。
30歳は、結婚し身を固めるのに20歳ひょっとしたら25歳よりもずっと良いと思われるかもしれません。
それには賛成します

ただ、Facebook上で結婚報告がされ始める頃に誰でもいいからと同棲相手や寝た相手を捕まえようとするのは、自分を高めることにはなりません。
結婚に備えるのに最適なタイミングは、適した相手に会う前です。

つまり、仕事と同様に恋愛に対しても意識して行うべきなのです。
家族を選ぶということは、たまたま自分を選んだというだけの人と漠然と一緒に過ごしたり時間を潰すということではなく、誰とどのようなものを望むか、意識して選ぶことなのです。
では、エマはどうなったでしょうか?

エマと連絡帳を繰ってみると、別の州の美術館で働いているかつてのルームメイトの従兄弟を見つけました。
ゆるい繋がりのお蔭でエマは美術館で仕事を見つけ、その仕事の雇用契約をきっかけに同棲していた彼氏の元を去りました。

5年経った現在では、エマは美術館の特別イベント企画を担当しています。
彼女は注意深く選んだ男性と結婚し、新たなキャリアを心から気に入っていて新たな家族を愛しています。
エマから届いた葉書にはこう書かれています。
「今では緊急連絡先が空欄でも狭すぎると思うようになりました」
エマとの体験談を聞くと簡単なことに思えますが、それこそが私が20代に向き合う中で好きなところで、とても簡単に救うことができます。
20代の人たちは、ロサンゼルス国際空港から西のどこかに向けて、今まさに飛び立とうとする飛行機のようなものです。

離陸直後にちょっと経路を変更するだけで、着陸地点がアラスカになったりフィジーになったりします。
同様に21歳25歳、もしくは29歳でも、1回の素晴らしい会話や1度の転機や、1つの優れたTEDトークが何年にもまたは何世代にも渡って絶大な影響を与えることができるのです。

これは皆さんの周りにいる20代全員に広める価値のあるアイデアです。
アレックスを診た経験から学んだ単純なことですが、今となってはこれをエマのような20代に毎日伝えられる立場なのはうれしいことです。
今の30歳は昔の20歳に相当しません。
大人として20代を有効に使い、アイデンティティ・キャピタルを築き、ゆるい繋がりを活かし家族を選んで下さい。

知らなかったことや、しなかったことに縛られてはいけません。
皆さんは、今まさに人生を決めているのです。
ありがとうございました。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
今回はメグ・ジェイさんのTEDトークの日本語訳全文をご紹介しました。
ご参考になれば幸いです。



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